10月 152013
 

Number Web によると。

 試合開始の3時間前から配布されることになった入場整理券を求め、長い行列がどこまでも続く。場内では、白地に赤い文字で「Miki」と書かれたカードが数十枚と掲げられ、応援幕もあちこちに飾られている。

2年前には世界選手権でキム・ヨナに完勝!

 この規模の大会では異例の光景が広がる中、10月13、14日の両日、安藤美姫は関東選手権に出場し、ショート、フリーともに1位で優勝を決めた。

 実戦に復帰してから2回目となる大会だった。

 9月26日から28日にドイツ・オーベルストドルフで行なわれた、今季初戦のネーベルホルン杯では、ショートで59.79点を出して2位、フリーでは103.07点の4位で合計162.86点の総合2位の成績を残している。

 そして2つ目の大会として臨んだのが、関東選手権だった。

 この大会で7位以内に入れば東日本選手権への出場権が得られ、東日本選手権で6位以内に入れば代表選考会である全日本選手権に出る権利が得られる。ソチへの道の、大事な第一段階であった。

■出場選手はわずか5名。自動的に決まった東日本選手権進出。

 出場選手は5名にとどまったため、結果にかかわらず東日本選手権に自動的に進めることになり、問われたのは内容であった。

 あらためて目の前で見せたのは、おそらくは練習をきちんと積んできたであろうことをうかがわせる演技ではあった。シャープに絞られた体つきもそうだし、フリーでも、冒頭から仕掛けた2つの3回転ジャンプこそ回転不足を取られたものの、トリプルサルコウを成功させるなど、関東選手権という場では、やはり持っている力の違いを見せつけることとなった。合計得点は147.30点と、オーベルストドルフほどの出来ではなかったが、出産を間に挟んでの長いブランク明けからの2大会目であることを考えれば、十分評価に値する。

 だが、別の時間軸から見れば、見方は変わる。つまり、目標とするソチ五輪から逆算するなら、道筋は容易ではないことを実感させられた。

■ソチ五輪の代表選考は、いかなるものか?

 ショートに比べて演技時間の長いフリーでは、時間が進めば進むだけスピード感が失われ、スピンなどの切れも悪くなっていった。スタミナの問題が大きかったのだろう。演技終了後、天を仰いだ表情には疲労の色が隠せなかった。

 ソチ五輪の日本女子の出場枠は3。代表選考基準は、

(1)12月に行なわれる全日本選手権優勝者。
(2)全日本2、3位の選手とグランプリ(GP)ファイナルの日本人表彰台最上位者から選考。
(3)先の選考から漏れた選手と全日本選手権終了時点でのワールド・ランキング日本上位3名、国際スケート連盟(ISU)シーズンベストスコアの日本上位3名の中から選考。

 ――となっている。

 グランプリシリーズに出場できない安藤は、全日本選手権優勝による自動内定はともかく、仮に全日本選手権で2位ないしは3位になったとしても、(2)と(3)の選考条件においては、不利な立場にある。

■浅田、鈴木、村上らも、辛く厳しい競技人生を歩んできた。

 そもそも、昨シーズンの世界選手権に出場した浅田真央、鈴木明子、村上佳菜子らを相手にしての代表争いである。

 出産を経ての復帰ということもあり安藤に注目が集まりがちだが、浅田はむろんのこと、鈴木、村上にも、それぞれに失意や苦悩を味わいながら歩んできた辛く苦しい過程があり、その中で、時間をかけて真摯に取り組み、積み上げてきたものがある。数々の国際大会での実績もその証明の一つであるし、目標として見定めてきたオリンピックへの思いも生半可ではない。

 12月の全日本選手権から逆算すれば、残り2カ月あまり。そうした選手たちと伍するまでに至るのか、間に合うのか……。

 そこが焦点であり、だとすれば、簡単に解決はできないスタミナ不足をはじめ、課題が多いことが浮き彫りになった大会といえるだろう。

 それでも、安藤の表情に翳りはなかった。 

■どれだけ厳しい道なのか、本人が一番理解している。

 カメラマンのみが入場を認められた表彰式のための部屋へと向かうときには、知人と、おそらくは「超疲れた。朝から足、動かなかった」という意味合いの言葉を交わし、疲れを認めながらも明るく会話できていた。表彰式の場でも終始笑顔で、他の選手と談笑する姿が見られた。

 大会期間中、各種メディアへの取材対応を行なわなかった安藤は、終了後、書面でコメントを発表している。

「今回、沢山の観客の方や報道機関の方においで頂いたこと、本当にうれしく思います。

 今回の演技は、ショートプログラムを重視して練習してきました。フリーの演技に関しては、久しぶりの国際試合の疲れを残してしまい、課題も残る2日間になりましたが、ドイツとこの試合を経て今の自分に何が足りないかが明確になったので今後につながる良い試合になったと思います。

 今後は皆様の心に残る演技をお届けできるよう努力していきたいと思っています。

 表彰式の後、演技を残している選手たちがいらっしゃいますのでこのような形でお伝えいただきました。

 今後ともよろしくお願いいたします」

 当の本人が何よりも険しさを理解し、その上で挑んだ道であることをしっかりと自覚している――。

 試合後の明るさは、周囲にそう感じさせるに十分なものだった。

 11月1~4日の東日本選手権で6位以内に入ると、安藤美姫は全日本選手権へと進むことになる。

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