2月 192014
 

夕刊フジ によると。

 冬季五輪の華、女子フィギュアスケートのショートプログラム(SP)は19日午後7時(日本時間20日午前0時)から始まる。今大会を集大成と位置づける浅田真央(23)=中京大=は、前回バンクーバー大会銀メダルの雪辱を果たすため、4年かけて磨き直した技術と表現力で悲願の金メダルを目指す。カギを握るのはジャンプの構成だ。まずはSPの冒頭に組み込まれる代名詞の“新生トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)”の成功で勢いに乗る。フリーでは当初予定のアクセル2回を封印して1回とし、五輪史上初となるアクセルを含む全6種類の3回転ジャンプを跳ぶ。その数は誰もなしえなかった8回。“エイト・トリプル”という大きな賭けが、金メダル奪取のシナリオとなる。

 浅田はSPで最終30番目に、ショパンの「ノクターン」の曲で滑走する。1つ前は地元ロシア選手権覇者の17歳、アデリナ・ソトニコア。同じくロシアの新生、15歳のユリア・リプニツカヤの演技後で大歓声を引きずっての登場となった団体戦SPと同様、“完全アウェー”が想定されるが、「自分の演技に集中するだけ」と浅田。五輪独特の緊張を払拭できずに大技のトリプルアクセル(3A)で転倒した失敗は繰り返さないという、強い気持ちをみせる。

 戦いは浅田、五輪連覇がかかる23歳の金妍児(キム・ヨナ、韓国)、リプニツカヤの3人を頂点として、僅差が予想されている。採点競技のフィギュアスケートで、勝負の行方を左右するのはいうまでもなく審判団のジャッジだ。「フィギュアはスポーツではなく、芸術」という考えが根強いロシアでの開催という要素も加わる。

 欧州にも同じ考えがあり、2006年トリノ大会では、荒川静香が「派手なジャンプを減らして全体の演技を重視」したフリーで、イナバウアーをはじめとした総合的な芸術性を評価されて金メダルを獲得している。要するに「作戦勝ち」だった。

 浅田は初出場だった前回バンクーバーで武器である3Aをフリーで2回成功しながら中盤の連続ジャンプで3回転が跳べず、終盤では足を取られて3回転が1回転になってしまうミスが重なり、金メダルを逃した。

 自慢の大技だけでは勝てないことを痛感させられ、新たに師事したのが名伯楽、佐藤信夫コーチだった。ジャンプを一から見直し、スピード感ある力強い滑りなど基礎から鍛え直した。作り上げたのは、助走スピードを落とさずに跳び、流れるように次の演技に入る新しい3Aだ。ジャンプ+ステップなども含め、見た目の美しさを追求してきた。

 得意の大技は、ラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」の曲で滑るフリーでは1回に減らした。2回の3回転半を入れるよりも1回にし、3回転-3回転の連続ジャンプを組み込んだ方が基礎点は高いからだ。かねて「(4年前の)気持ちをすっきりさせたい」と話していた金メダルへの執念で、強敵に勝つための現実路線だった。

 完成させた最高難度の「自分にしかできないプログラム」のポイントはもう1つある。成功すれば五輪で女子初となるアクセルを含む全6種類の3回転で、これを8回飛ぶ“エイト・トリプル”だ。

 バンクーバーでは6回、昨年12月のグランプリ・ファイナルは7回だった。浅田はこのミラクルジャンプをジュニア時代に1度成功している。しかしシニアでは浅田はもとより、誰も成功していない封印されてきた秘策なのだ。

 本人は「アクセル2回だけではなくて、トリプルアクセル1回にして、ジャンプすべてを入れるというのもひとつの自分への挑戦」という。

 ただ、「変更した連続ジャンプの基礎点は高くなるが、第2ジャンプが回転不足をとられやすい。これをどう決めるか。失敗すればトリプルアクセルを成功した場合より点数が低くなる」とフィギュア関係者。大きな賭けとなる可能性もある。

 フリーの振り付けを担当するタラソワ・コーチは「真央の演技はトリプルアクセルなしでは考えられない。絶対に飛ぶべきだ」と、ジャンプで勝負することを主張してきたのに対し、佐藤コーチはジャンプにこだわり過ぎる浅田を説得し、あくまでも総合的な演技を目指してきた。この4年で3Aで失敗しても高得点を維持したのは、二人三脚で行ってきた「真央再生計画」のおかげでもある。

 まずは冒頭で披露する伝家の宝刀、3Aをいかに完璧に跳ぶか。浅田の金メダルをかけた戦いが始まる。

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